【特集】1980年代、グループAツーリングカー

【特集】

GroupA_01_トラストレビン-ユニシアジェックスGTR【特集】80年代、グループAツーリングカー
1980年代は、景気の良い時代を反映して、国内外のモータースポーツが、とても盛んでした。
中でも、グループCと並んで国内外で人気を博したのが、「グループA」と呼ばれる規格の、市販乗用車を改造したツーリングカーレースでした。
普段街中で見慣れた形のクルマによって行われるレースは、見る人とプロレーシングドライバーや、ワークスマシンたちとの距離を縮めるレースだけに、毎回サーキットは多くの人で賑わいました。
ここでは、1993年8月8日のTIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)グループA300Kmレースの模様を中心に、グループAマシンをご紹介します。
(右の写真は、AE101型トラスト・カローラレビンとBNR32型ユニシアジェックス・スカイラインGTRです。)




GroupA_02シュニッツアーBMW635CSIシュニッツアー・BMW635CSI
(SCHNITZER BMW635CSI – EUROPE TOURING CAR CHAMPIONSHIP(ETCC) – ヨーロッパ・ツーリングカー選手権)
ヨーロッパで始まったグループA規格のツーリングカーレースで活躍し、日本にもハルトゲ(HARTGE)仕様(オートビューレック・モータースポーツ・チーム)が持ち込んで大活躍したBMW635CSIです。
写真は残念ながら展示用モックアップと思われますが、ヨーロッパ・グループA選手権で走った、スケルトン風のシュニッツアー・チームのカラーリングが施された635CSIです。
635CSIは、ヨーロッパ・グループA選手権(ETCC)で、3度のドライバーズチャンピオンを獲得しました81,83,86)。


GroupA_03クラリオンスカイラインRS日産・スカイラインRS
(DR30型 – 全日本グループA選手権)
日本では、1985年にグループA規格の全日本選手権が始まり、当初からシリーズ争いを引っ張ったのが、日産・スカイラインRS(DR30)でした。
初代チャンピオンは、BMW635CSIに奪われたものの、日産は、ワークス系のスカイラインRSを大挙エントリーし、星野、長谷見、和田孝夫、都平、鈴木亜久里選手など、日本のトップレーサーが、熱い走りで魅了しました。
DR30型は、オーストラリアのバサースト1,000kmレースでも活躍していました。
写真は、俳優の岩城晃一氏がドライブした、1986年仕様のクラリオン・スカイラインRSです。


GroupA_04クラリオンスカイラインRSグループAレースは、量産車ベースながら、エンジンや足回りは、比較的ハイチューンが施されていましたが、内外装は、量産車のままと云う規格でした。
また、カーボンファイバーやケブラーと云った炭素素材もそれほど使われていませんでしたし、ダッシュボードやドア内張りも量産車のものが使われています。
エンジンも量産車に搭載のエンジンがベースになっておりました。


GroupA_06ボルボ240ターボボルボ・240ターボ
(RAS Sport Volvo 240turbo – B21ET型 – 1986年ETCC)
80年代中期のETCCで、BMW、ジャガー、ローバー等の勢力図に台頭したのがボルボでした。
「Flying Blick – 空とぶレンガ」などと呼ばれた、レーシングマシンらしからぬ角ばったボディの240ターボが、クーペボディの強豪を次々と倒してゆく姿は、話題となりました。


GroupA_07ボルボ240ターボ1985年に日本で開催された「国際ツーリングカー耐久レース インターTEC」にも、エッゲンバーガー・モータースポーツ(Eggenberger Moterenbau AG)の240ターボ2台が出場し、ぶっちぎりのワンツーフィニッシュを飾りました。
写真は、1986年に、ETCC組として、国際ツーリングカー耐久レース インターTECに出場した、ジョニー・チェコット(Alberto “Johnny” Cecotto)とアンデルス・オロフソン(Anders Olofsson)組のRASモータースポーツのカラーリングが施された240ターボです。


GroupA_05ボルボ240ターボNORDICAのカラーリングは、ETCCのままですが、日本で走った際には、サイドに「VOLVO JAPAN DEALER TEAM」のロゴが入っておりました。
こちらも、残念ながら展示用のモックアップと思われます。


GroupA_08トランピオシエラRS500フォード・シエラ・RS・コスワース
(FORD SIERRA RS COSWORTH – 1987年 全日本グループA選手権)
1987年からETCCのグループAの覇権勢力図に、フォード・シエラRSコスワースが加わります。
86年まで、エッゲンバーガーが、シエラXR4tiで参戦しており、最終戦で優勝。
87年シーズンからは、コスワース(Cosworth)チューンのRSコスワースと云うグループAスペシャルを投入し、TEXACOカラーのワークスシエラが大活躍しました。


GroupA_09トランピオシエラRSコスワース日本でも、ハルトゲBMWでチャンピオンに輝いた、長坂尚樹選手が、87年からトーヨータイヤ(TRAMPIO)カラーのシエラRSコスワースでいち早く参戦し、この年のインターTECでは、RS500(RSのエボリューションモデル)を操ってETCC勢を相手に2位に喰い込む大活躍を見せました。
写真のカーナンバー12番は、往年の日本グランプリドライバー、津々見友彦選手が率いる「ObjectT」チームのトランピオ・シエラRSコスワースです。


GroupA_10トランピオシエラRS500RSコスワースは、レーシングエンジンメーカーのコスワース社がターボ(ギャレット・エアリサーチ製)で、チューニングした、グループAレース用に開発したスペシャルマシンで、グループA規定に合わせて少量が生産されたモデルです。
87シーズンの後半からは、「RS500」と云うRSコスワースのエボリューションモデルに移行しました。


GroupA_11BMW_M3_E30

BMW M3
(E30 – 全日本グループA選手権)
当時の全日本グループAは、3つのクラス別けで選手権が争われていました。
Division3が、総合優勝を狙える大排気量(2,500cc以上)などの大パワーのクラス。
Division2が、その下の中間排気量クラス(2,500ccまで)。
Division1が、コンパクトカークラス(1,600ccまで)
と、簡単に説明するとこのようになっておりました。
※ターボ車は、排気量×1.7倍で計算していました。
BMW M3は、グループAレースのDiv2クラスを狙って開発されたマシンで、3シリーズの小型ボディに、チューンナップされたエンジンを搭載し、ブリスターフェンダーで幅広タイヤが装着できるスポーツセダンでした。
日本のグループAレースでもエントリー台数が多く、Div2クラスの筆頭とも云えるマシンでした。


GroupA_12BMW_M3_E30
こちらは、E36型 SCHNITZER BMW M3のエンジンルーム。
サスペンションストラットのあたりからバルクヘッドにかけての補強や、カーボンファイバー製のインテークマニーホールドなど、レースのための特別仕様であることがわかります。


GroupA_13トランピオシビックEG6ホンダ・シビック・SiR
(HONDA CIVIC SiR – EG6型 – 全日本グループA選手権)
Division1クラスは、国産各社の1600ccクラスのクルマが中心のクラスで、特にホンダ系vsトヨタ系チームの激戦区となっておりました。
ホンダは、可変バルブタイミング機構(VTEC)を搭載して、ライバルをリード。
93年は、写真のB16エンジン搭載のEG6型シビックが大活躍しました。


GroupA_14カルソニックスカイラインGTR_BNR32日産・スカイライン・GTR
(NISSAN SKYLINE 2600 GTR – BNR32型 – 全日本グループA選手権)
全日本グループAの真打ちと云えば、このBNR32型GTR。
中でも、最も有名なのが写真のワークスマシン「カルソニック・スカイライン(CALSONIC SKYLINE)」。
日本一速い男、星野一義選手が操るマシンで、グループA最終年の1993年シリーズでもチャンピオンに輝いています(ドライバーズタイトルは、相棒の影山正彦選手)。
「強いマシンは、カッコイイ」の代名詞と云えるカルソニック・ブルーの鮮やかなマシンで、4WDの強烈なトラクションは、TIサーキットのヘアピンでも地響きを伴う迫力のコーナリングでした。


GroupA_15ユニシアジェックススカイラインGTR_BNR32No.12カルソニック号との2大勢力だったのが、伝説の4冠王、長谷見昌弘選手が操った、「ユニシアジェックス・スカイライン」。
こちらは、蛍光オレンジと、白の鮮やかなカラーリングで、相方は、こちらもベテラン福山英朗選手でした。
当時のグループAは、写真の通りサイド出しのエキゾーストシステムで、ターボ車は、NAに比べて静かではありますが、21世紀のツーリングカーよりは遥かに爆音で、シフトダウン時のエキゾーストからの炎も迫力満点でした。
窓から出ているホースは、室内に外気を導くためのもので、灼熱の8月のレースならではの装備でした。


GroupA_16 STP TAISAN スカイラインGTR_BNR32日本のレース界の神様的な存在、高橋国光選手と、ドリキン土屋圭市選手(当時は土屋圭一)の「STP TAISAN GTR」。
写真は、国さんがTIのメインストレートを駆け抜けるところです。
この1993年TIサーキット英田 グループA300kmレースでは、Div3クラスはすべてBNR32型GTRで、計7台が出場しておりました。


GroupA_17TIcircuitAIDA199308081993年TIサーキット英田 グループA300kmレース
ウイナーズサークル。
Division3 
優勝:CALSONIC SKYLINE(星野一義/影山正彦 組)※この年のシリーズチャンピオンになりました。
2位:KYOSEKI SKYLINE(鈴木利男/飯田章 組)※渋い走りの鈴木選手と、当時の日産系では若手の飯田選手でした。
3位:BP SKYLINE(横島久/トム・クリステンセン(TOM KRISTENSEN)) ※いぶし銀の走り、横島選手と、後のミスタールマン、クリステンセン選手!
Division2
優勝:ASAHI KIKO VALVOLINE M3(アンソニー・リード(ANTHONY REID)/川本篤) ※英国BTCCでおなじみのアンソニー・リード選手。
2位:AUTO TECH M3 (ANDREW GILBERT SCOTT/中谷 明彦) ※何かと日本になじみの深いギルバートスコット選手と、ジャーナリストレーサーの中谷明彦選手
3位:IPF WAKO’S M3(牧口 規雄/松田 秀士) ※いろんな意味で有名なドライバー松田秀士選手
Division1
優勝:JACCS CIVIC(服部 尚貴/金石 勝智) ※フォーミュラ・ニッポン・ドライバーのコンビ。
2位:IDEMITSU CIVIC(中子 修/岡田 秀樹)※無限のワークスマシン。通好みのベテラン二人がドライブ。
3位:TOM’S CAROLLA LEVIN(関谷 正徳/Pierre-Henri Raphanel) ※日本のミスタールマン、関谷選手とこちらもルマンドライバー、ラファネル選手のコンビ。
このAE101のエンジンルームには、「打倒!無限」の文字が貼ってありました。


GroupA_18TIcircuitAIDA19930808
【こぼれ話】
外観は、社外品エアロパーツが許されない為、街で見かけるまんまの姿のクルマに、名だたるスタードライバーたちが、ステアリングを握り、スポーツマンシップの範囲で熱いレースを毎回見せてくれる。そんな身近に感じられるクルマでプロの闘いが見られたのが、このグループAレースでした。
この頃は、派手な当て合いなどは無く、ギリギリのサイドバイサイド、バンパーツーバンパーの真ののドッグファイトが見られた時代だったとも言えます。
その後、クルマの安全装備が充実したこともあってなのか。後継のJTCC以降は、接触などのラフプレーが目立つようになったように思います。
グループA人気は、単に身近なクルマのレースと云うだけでなく、操る人たち、いぶし銀のプロたちの真のレースが魅力だったと云えるでしょう。
また、海外のグループAでは、マカオのギアレースをはじめとする、時にはF1ドライバーまでもがステアリングを握るシーンが見られたのも、また良き時代のレースでありました。
これらのマシンを見ると、今でも熱い想いがこみ上げてくる、そんなシーンをたくさん見せてくれたグループAは、鮮明に記憶に残る素晴らしいレースでありました。

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