農民車(型式不明 – 年式不明)

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農民車(型式なし - 年式不明)_01農民車
(型式不明 – 年式不明)
少々クルマ好きの人にも知られていない車のカテゴリーがあります。「農民車」。
実態は、「農耕用小型特殊車」なのだそうですが、これが創りがまたユニークで、一部の地域では結構な数が現存し、新車もあると云うのだから驚きです。
ここでは、中でもとても希少な古い農民車の一台をご紹介します。


農民車(型式なし - 年式不明)_02古いクルマがお好きな方なら、このトラックの顔つきには見覚えがあるかもしれません。そして恐らくそれも正解でしょう。
但し、屋根がありません。さらにその車種に詳しい方ならその他がいろいろと違って見えるはずです。


農民車(型式なし - 年式不明)_03「農民車」と説明書きがありました。
古くから(現行の道路交通法施行前と思われる)から、存在したという自動車の1カテゴリーだそうです。
わたしも、この個体を観た時に初めて知りました。
オーナーさまの説明を引用すると。
「果樹園芸の盛んな土地で、鉄工所などによって、自動車やバイクの部品を使って、果樹農園用に製造された車体のことです。果樹の枝を痛めず作業するために、屋根はありません。」

ですから、形はもちろん様々なものが存在するようです。


農民車(型式なし - 年式不明)_04「自動車やバイクの部品?」と思って、さらによく観ると、4台の自動車の写真と共に、こんな説明書きがありました。
「和歌山でみかん農家用に、これらの車体を使って、作られたものです。」
そこに貼ってある写真は、「マツダT1500、T2000」(フロント)、「ダイハツCM型1.5屯」(リア)、「ホープスター」(フェイス)、「サニー1000 A10型」(エンジン)だそうで、それぞれがカッコ内のパーツになっているそうです。
つまり4台のクルマ(それも今やどれもが骨董品ですが)の部分部分を使って、一台の働くクルマに仕上げてあると云うのです。
これぞカルチャーショックでした。いくら好きな分野でもまだまだ知らない事があるようです。


農民車(型式なし - 年式不明)_05ダイハツCM型と云う車体後半部分。ダンプのように荷台が上下します。ヤレ方が道具として使われてきた雰囲気を醸し出していて、ある意味ピカピカよりかっこよく見えます。
よく観ると、あおりのパネル部分は木製のようです。年式不明ですが、別に骨董品を集めて創ったのではなく、当時これらの素材を合わせて創ったのでしょう。そして少なくとも21世紀前後まで現役で大切に使われてきたのだと思われます。


農民車(型式なし - 年式不明)_06日産・サニー1000のものと云うA10型エンジン。
搭載位置は、運転席の真横で、むき出しの状態で載っています。直列4気筒ですし、メンテナンスは楽そうですが、夏は冷却ファンの熱い風をそのまま浴びることになると思います。
床板と同じ溝板の模様が入ったペダル類もお手製のようです。床板は、オイルフィルターがあたる部分を綺麗にカットしてあるのが手造りならではの雰囲気です。
エンジンが真横なので、シフトレバーは背もたれ近くに追いやられています。


農民車(型式なし - 年式不明)_07これがレース車両なら「スパルタンな男の仕事場」とでも云うのでしょうが、農民車の場合、「質実剛健」、「実用主義」と云う四字熟語が合っている気がします。
居住空間の全貌です。シフトパターンは、マジックでインストゥルメントパネルに書いてありました。
前に伸びる赤いレバーがシフトでしょうか。その後ろはダンプのレバーと思われます。
「前-後N」と書いてあるので、黒いノブのレバーで、前進と後退を切り替えるのでしょうか。サニーのパワーユニットとミッションなのでリバースギアも書いてあるし、謎です。
助手席側には手すりが着いていて、親切設計でした。


農民車(型式なし - 年式不明)_08太いパイプフレーム上に、サイドブレーキレーバーが移設してあります。助手席の方には、A型エンジン特有の「フライパン」こと、エアクリーナーボックスが見えます。時にはテーブル代わりに使われたかもしれません。そうするにはいい位置です。
屋根も幌も無いので、機械類も雨ざらしなのでしょうけど、さすがは鉄製。錆びますがしっかりと長持ちしそうな雰囲気です。実際に長持ちしてここまで実働なのですが。


農民車(型式なし - 年式不明)_09こちらは、マツダTシリーズ三輪トラックのものと思われるホーンリング付きステアリング。往年のマツダマークが輝いていました。さすがに経年劣化でステアリングの上部が痩せて中の骨組みが見えています。
サイドミラーは、形状からオートバイ用と思われます。


農民車(型式なし - 年式不明)_10【こぼれ話】
この個体は、「チームヤマモト・クラシックカーフェスティバル2011」の会場で、オーナー様に声を掛けさせて頂き、取材させていただきました。ありがとうございます。
「農民車」、初めてその存在を知りました。
以前、ちょっとした仕事がらみで、和歌山のみかん農園内で、ヤンマーあたりのキャタピラー式の手押しの積載車を運転したことがあるのですが、その時でも、何度もみかんの木にウエスタンラリアートを食らいそうになった記憶があります。
テレビでりんご畑を走るMP5型ミゼットの屋根無しを見たこともあるのですが、このように自動車の部品を組み合わせて一台創る手法があるのは知りませんでした。
アジアの国の「トゥクトゥク」や「ジープニー」あたりも同様の手法と聞きますが、まさか日本にしかも日本の道交法にも叶った(と、云うか道交法施行前からあったので特例枠らしい。)車両が存在したことに驚くばかりでした。
これ、わが国の究極のリユースだと思いますが、排ガス規制だの云々で、将来はどのようになるのでしょう。
ゆくゆく一台、何百万もするピカピカの「量産型専用設計」車両に取って代られるのは時代の流れかもしれませんが、ホントにその流れでいいのか?と一方で考えさせられる一面がありました。
貴重な自動車との対面でした。

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