ダブリアン・MK5
(DAVRIAN Mk-V – 英国車 – 1971年)

大変珍しいスポーツカーをご紹介します。
1971年式、英国製のダブリアン・MK-Vと云うリアエンジンのスポーツカーです。
驚異的に低いボディワークはFRP製で、リア部分に45度に傾けて縦置きに搭載されていると云う、構造的にも大変ユニークな一台です。

このダブリアンが、先ず一目を引くのは、この驚異的に低い車高です。計っては居ませんが、恐らく100~120cmの間です。
一瞬チョップトップのカスタムカーかと見間違えるほどの屋根の低さでした。
オーナーさん曰く、170cm以上の身長だと、乗り込むと降りるときに大変だそうです。
確か、スーパーカーブーム時代のランボルギーニ・カウンタックが117cm、ロータス・ヨーロッパが114cmと云われていましたが、まさにそのぐらいの低さでした。

そして、ダブリアンの特徴は、低い外見だけでなく、メカニズムにも及びます。
まず、オールファイバー製ボディに搭載されるエンジンは、リヤアクスル後方にマウントされる、いわゆるRR駆動です。
それゆえに、後姿もリヤカウル部分に左右非対称のアウトレットが設けられていたり、リヤガーニッシュにアウトレットが設けられて居たりします。
エンジンフードとしては、他のミドシップスポーツのように、上部ハッチが開きますが、リヤフェンダーにまで回り込むカウリングも脱着出来るようになっていました。

フロントフードの左右には、給油口があり、フロントアクスル後方のフェンダー内側に、それぞれ燃料タンクが装備されていると言う事です。
左右に燃料タンクが別れているのは、ジャガーをはじめ、英国車によくみられるレイアウトです。
ちなみに、ダブリアンの場合は、左右均等に燃料を使うように工夫されているそうです。

リアアクスル後方にマウントされるエンジンは、ヒルマン・インプ用の875ccで、40BHP程の出力だそうです。
しかし、車重が600kg台と云う軽さの為、かなり機敏に走ることが出来るそうで、当時は、特にヒルクライム競技を中心に、サーキットなどでも活躍したそうです。
他に、同じインプ用の998ccエンジンのタイプもあるそうです。
そして、なんと云っても、エンジンのレイアウトが右に45度傾斜して搭載されていることが特徴です。
恐らく低重心化を狙っての事だと思いますが、シリンダーブロック側面のスパークプラグが、真上を向く程の強い傾斜で搭載されていました。
この縦置きマウントエンジンに、トランスミッションが繋がっており、運転席の方へと伸びています。

FRP製のとても軽いドアは、外側にはヒンジが無く、ドアの厚み部分にある穴の中を押すと開く仕組みになっています。
FRP製ですが、厚みは十分にあり、開閉も比較的しっかりしておりました。
内張りが、アルミニウムの鉄板に簡単なドアノブと取っ手のみと云うところが、レーシングスポーツの血統である証です。

こちらが、ドアを開けるための穴。
この奥を押すことで、ドアが半開きになります。

完全にレーシングスポーツの雰囲気漂うコックピット。
驚異的に低い車高ながら、サイドシルよりも、さらに深い位置にシートのヒップポイントがあることが判ります。

インストゥルメントパネルは、簡易的なボードに、計器類が埋め込まれている、ハンドメイドのレーシングカーのタイプです。
それでも、木目をあしらってあるところが、さすが英国製です。
アルミ製のセンターコンソールに8つ程ズラリと並ぶのは、管ヒューズでした。

ダブリアンMk5のセンターコンソール部分。
トグルスイッチは、ヒーター、ワイパー、ヘッドランプ、ホーン、エンジン用のクーリングファンと、管ヒューズの皆さん。
真ん中にアナログ式のストップウォッチが搭載されているのが、いい味出しています。
アナログメーターは、左から時計、油温計、油圧計、水温計となっていました。

ステアリングコラムには、方向指示器のスイッチのみ搭載され、メインのメーターは、速度計と回転計、そして電流計と、ワーニングランプ類でした。
他に、燃料ポンプのトグルスイッチも着いていました。

居住空間の後ろは、ファイバー製のボードで覆ってあります。
そこには、ロールバーと、真ん中には、消火器が搭載されていました。
ここまで観た限り、どちらかと云うと、ナンバーが付くレーシングマシンと云う雰囲気でした。

【こぼれ話】
このダブリアン・Mk5は、チーム・ヤマモト・クラシックカーフェスティバル2013の会場で、オーナー様お声を掛けさせて頂き、取材させていただきました。ありがとうございます。
幾ら、子供の頃からクルマの名前を沢山知っていても、まだまだ世界には名も知らないクルマが沢山あります。
ダブリアンと云う名前も、この日初めて知りました。
特に英国は、バックヤードビルダー系の少量生産メーカーが、数多く存在した時代がありましたので、まだまだ知らないメーカーは沢山ありそうです。
ダブリアンの場合は、ヒルマン・インプのパーツを中心に、フロントガラスなども、他車からの流用を上手く組み合わせて造られているそうです。
生産台数は、250台程と言いますから無理も無い話です。
(有名どころのランボでも、ディアブロGTのヘッドライトが日産300ZXのパーツ流用だったりしましたし。)
それにしても、カスタムカーショウにも通用しそうなこの低い屋根のインパクトは強烈でした。
排気量も875ccと998ccと云う、リッターカーに満たない大きさで、これだけ面白そうなスポーツカーが造れると云うのは、クルマが巨大化し続ける21世紀でも見習うべきところが多いと思います。
小さなエンジンをいっぱいまで引っ張って、軽い車体を自在に振り回して走る面白さ、是非現代版があってもいい気がします。
998ccなら、ホンダCBRにも同じ排気量がありますし。
とりあえず、この現代版は、童夢のプロジェクト「ISAKU」に期待しましょう。
と、夢が膨らむ魅力的な英国ライトウエイトスポーツの一台でした。



