いすゞ・PAネロ・イルムシャー160R(ISUZU PA-NERO Irmscher 160R – JT191S型 – 1991年)

日本車-いすゞ

いすゞ・PAネロ・イルムシャー160R(JT191S型 - 1991年)_01いすゞ・PAネロ・イルムシャー160R
(ISUZU PA-NERO Irmscher 160R – JT191S型 – 1991年)
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比較的新しいクルマで、日本製でありながら、今や大変めずらしくなった一台をご紹介します。
いすゞ自動車が、自前で乗用車を製造しなくなって久しくなりますが、ここにご紹介するいすゞ・PAネロ(PA-NERO)は、1993年にいすゞが乗用車の自力生産から撤退するまで製造された車種でもありました。
米国では、GM社が販売した「GEO・STORM」として人気を博したモデルでもあります。
ここでは、純正の状態が大変良く保たれた、コンクールコンディションのイルムシャー仕様、160Rをご紹介します。


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いすゞ・PAネロは、ジェミニの系統と云う位置付けだそうですが、当初は上級のスペシャリティーカーだった、「ピアッツァ(Piazza)」も、二代目の米国仕様「Impulse」は、PAネロがベースモデルだったようです。
GM傘下時代のいすゞだけあって、全て日本国内生産ながら、販売は米国が中心だったそうです。
つまり、日本製なのに、GMの「ジェオ・ストーム」の日本版モデルと云うユニークなポジションを与えられていたのが、このPAネロのようです。
生い立ち同様に、PAネロはスタイリングも大変ユニークです。
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元々、GMからのリクエストで造られたと云われるだけに、顔つきは当時のGMのスポーティモデルやスペシャリティモデルのDNAが色濃く出ています。
先端の一体型バンパーは、C5あたりのシボレー・コルベットのようですし、ヘッドライトはカマロやファイヤーバードのようでもあり、いわゆる「GM顔」です。
GMは、シボレーやポンティアックと云ったブランドがありますが、米国では「ジェオ(GEO)」と云うブランドがあり、そのブランドの人気車種「ストーム」のとして生まれたのだそうです。
さらにPAネロのややこしいところは、このGM顔も、最終デザインは日本人の手になるそうです。
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ヘッドライトは、セミリトラクタブル式で、AS型のCR-Xのように、ヘッドライトのハーフカバーが少しだけ開くように出来ています。
このデザインの好い所は、閉じたときと開いたときの表情の変化が少ないことが挙げられると思います。
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PAネロのセミリトラクタブルヘッドライトの動きを横から観てみました。
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後姿は、トランク付き形状のユニークなクーペ型と、このスタイリッシュなハッチバック型の二通りがありました。
ホンダ車のように、横幅が広く感じるデザインで、フルフラッシュサーフェス(窓枠や開口部の段差がほとんど無い)、エアロパッケージとなっています。
大きなグラスハッチが特徴で、後ろからの姿はこれまた日本車離れしており、時折街で見かけると、一瞬外国製のクルマと勘違いしてしまいました。
日本では、新車当時もあまり見かけなかった車種のひとつですが、米国で「STORM」は、大変よく売れたそうです。
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ここにご紹介しているのは、PAネロの中でも1991年に投入された、「イルムシャー・160R」と云うホットバージョンです。
ドイツのオペル車を中心に手がけるチューナー、「イルムシャー(Irmscher)」は、初代ピアッツァや二代目アスカなどの時代からいすゞ車の純正カスタマーブランドとして存在しており、有名な「ハンドリング・バイ・ロータス」のジェミニにもイルムシャー仕様がありました。
ここに紹介する濃紺のボディーカラーは、このイルムシャー仕様の証となる色でした。
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この斜め後ろからのフォルムが大変美しいPAネロ。
この角度から見ると、前のGM顔が想像し難いくらいにスタイリッシュです。
ドアも流れるような3次曲面のラインを描き、大変個性的で美しい仕上がりになっています。
リヤガラスハッチとサイドウインドウのフラッシュサーフェスがよく判る一枚。
リヤワイパーの停止位置も、敢えてこの位置であるところがかっこいいと感じました。


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前のワイパーの根元は、複雑な曲面を描いており、このスタイリングにもよく似合っています。
恐らく室内への外気取り入れ口の関係で、そうなっていないのですが、高級セダンのようにワイパーが隠れてしまうデザインでも、このPAネロのエアロフォルムはよく似合っている気がしました。


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後ろのサイドガラスは、屋根に向かって大きく湾曲しています。
しかし、はめゴロシではなく、僅かながら、内気を外に吐き出せるように若干開くようになっていました。
これも、このエアロフォルムと室内の居住性を両立するための工夫と思われます。
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ホイールは、イルムシャーの純正かと思ってしまうほど、さりげなく似合っていましたが、社外品のエンケイ製で、LIVOLNOと云う3本スポークタイプのアルミホイールが奢られていました。
このPAネロに、抜群のコーディネイトですが、それもそのはず、この個体のオーナーさんは、トーヨータイヤ系列のタイヤ屋さんのオーナーさんなのでした。さすが!
ちなみに、PAネロはジェミニ系ベースだけあって、4本ボルトとなっていました。
この個体に装着されたタイヤのサイズは、195/50R-15 82Vのトーヨー・PROXSES・R1Rでした。
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さて、イルムシャー・160Rと云うホットバージョンの特徴は、1.6リッター・ツインカムのインタークーラー付ターボの力で4輪を駆動すると云うものです。
このボンネットのエアスクープは、インタークーラーに冷たい外気を導くために機能しています。
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低いノーズにぎっしりと詰め込まれた感のあるPAネロ・イルムシャー・160Rのエンジンは、名前もかっこいい「4XE1-T」と名づけられたもので、、いすゞ製の水冷式直列4気筒4バルブDOHC 1588cc インタークーラー付ターボ(IHI製)のガソリンエンジンで、180BHPを発する、当時としてはきわめて強力なパワーユニットでした。
さらに、このイルムシャー・160Rはの駆動方式が4WDなのでした。
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カスタマイズされたかのような、インタークーラーカバーのめっきパーツも、じつは純正です。
耐久性に於いて、大変定評のあるいすゞ製のエンジンだけに、各部がとてもしっかりと造られている印象で、見た目も整然とされていてかっこいいエンジンでした。
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さて、室内を見てみたいと思いますが、最初にユニークなドアの開口レバーを。
PAネロには、ドアの取っ手は無く、リヤフェンダー側のくぼみに手を入れると、このようなレバーがドアに内蔵されており、このレバーを上に上げることで、ドアが開きます。
これも、もちろんデザインのための工夫と思われます。
21世紀のカスタムで流行の、電動リモコンで開く自動扉に改造する際に、ドア面の加工が不要と云う珍しいクルマです。
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未来的室内デザインに定評のあった初代ピアッツァの後継車と云うだけあって、室内のスイッチ類も綺麗にまとまっています。
まず、こちらはドアに取り付けられたパワーウインドウと電動式ロックのスイッチです。
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ドアを開くと、スペシャリティーカーの世界が広がります。
さらに、イルムシャー仕様ですので、イタルボランチ製のIrmscherロゴ入り専用ステアリングとレカロシートが標準装備されています。
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運転席の眺めです。
インストゥルメントパネル、特にコラムから生えるレバー類の代わりに、計器類の周りに一体化して取り付けられた沢山の操作スイッチ類は、ジウジアーロデザイン(しかもプロトタイプのデザインがほぼそのまま世に出た)初代ピアッツァのコンセプトを継承していると思われます。
このPAネロは、ジェミニ系のクルマでありながら、ピアッツァ・ネロの後継機と云う役割も与えられた車種なのだそうです。
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計器類は、至ってシンプルなデザインながら、視認性がよさそうで、決して安っぽく見えないものでした。
この計器類を見て、わたしはDMC-12あたりの文字盤を思い出しました。
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ダミーも含まれるようですが、とにかくスイッチが多いPAネロの運転席周り。
センターコンソールの3眼メーターは、とても綺麗に収まっていますが、オーナー様自身が取り付けたというLAMCO製の補助器類。
左から、ターボの圧力計、エンジンの水温計、電流計となっていました。
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こちらは、おまけです。
この個体には、様々なキャラクターが同乗していました。
室内には、2013年に流行したゆるキャラ「ふなっしー」、「クレヨンしんちゃん」のしんのすけ、そしてオーナー様のイチオシだったのが、リヤのガラスハッチを彩る「うる星やつら」のラムちゃん。
このラムちゃんは、オーナー様の自作だそうです。
よく、サーファー系のクルマにビキニ女性のシルエットをモチーフにしたガラスステッカーを見かけますが、あのステッカーとかけたのだそうです。
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【こぼれ話】
この個体は、いつも自動車、バイク、その他で大変お世話になっている友人のお知り合いの方のクルマを取材させていただきました。ありがとうございます。
タイヤショップの看板娘としても活躍中の、このPAネロ・イルムシャー・160R。
日常にも使っておられるようで、あまりにさりげなく置いてあるので、2回目の訪問でようやく気がついたのでした。
しかし、当時よりも21世紀になって、観れば観るほど、このクルマの優れたデザインが目に映りました。
そして、栄光の初代ピアッツァの後を受け継いだ帰国子女でもあるPAネロはとても魅力的なクルマでした。
テンロクで180馬力と云う高出力は、21世紀でも普通に通用する動力性能ですし、GM傘下で、いよいよ最後の力を振り絞っていた頃のいすゞの乗用車と云う気合を感じました。
じつは、PAネロの兄弟車がGMのGEO・STORMであることは、米国の西海岸に長年住んでいた友人の愛車だったことで知りました。
元々職場の同僚だった友人が、米国に渡って最初に買ったのがGEO・STORMでした。
慣れない英語圏での暮らしにようやく慣れた頃だったのもあってか、STORMをとても気に入っておられました。
そして、日本に帰国するときには、手放すのがとても惜しそうだったのが今でも印象に残っています。
当時、わたしは、GEOと云うブランドすら知らなかったので、どんなクルマか写真を送ってもらったら、「あれ?PAネロやん!」って不思議に思ったものでした。
当時、いすゞだけでなく、親会社のGMまでもが終末期だったこともあって、日本では現行モデルの時でも珍しい車種のひとつでしたが、実物を見てみると、そして、時間が経てば経つほど、魅力的に見えてくる優れた一台だったことが、今回解りました。
いすゞ製乗用車の末裔として、いつまでも走り続けて、その歴史を刻んで欲しいと思います。

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