アルピナ・B7・ターボ(ALPINA B7 turbo – 独逸車 – 1985年)
アルピナ・B7・ターボ
(ALPINA B7 turbo – 独逸車 – 1985年)
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1980年代にBMWの中型セダンであるE28型「BMW 5シリーズ」をベースに、BMW専門チューニングメーカーのアルピナ社(Alpina Burkard Bovensiepen GmbH & Co)が、1984年に送り出したターボチューニングのスポーツセダン、B7turbo/lをご紹介します。
濃紺のアルピナ・ブルーにゴールドのピンストライプ「アルピナライン」が施され、前後のエアロパーツ、レカロシート等が奢られた外装と、アルピナのスポーツチューニングが施された3.5リッター直列6気筒エンジンは、当時、自動車マニア垂涎の一台でした。
ここにご紹介する個体は、このB7ターボに、オーナーの手でさらなるチューニングが施された貴重な一台です。

1978年にデビューしたB7turboシリーズのエンジンを3.5リッターに拡大した「B7turbo/l」は、1984年に発表されました。
ドイツ本国仕様では、316BHP(236kW)の出力を叩き出す3,430cc、水冷式直列6気筒12バルブ+シングルターボを搭載した、当時ではとても高出力なスポーツセダンでした。
足回りにもネガティブキャンバーの強い専用チューニングが施され、前:205/55-16、後:225/50-16の極太タイヤがアルピナ専用のスポークタイプアルミホイールに組み合わされていました。
外装の造形は、前後に専用のスポイラーが備わる比較的大人しいエアロパーツのみでしたが、空気抵抗係数は、CD値0.35と云われていました。

その後の世界中のセダンのお手本となった美しいE28型BMWのシルエットに加えられたのは、前後のスポイラーと超扁平タイヤでしたが、アルピナ専用のピンストライプが施された濃紺の車体色で、一目でそれと判る個性を放っておりました。
この個体に備わるアルミホイールは、BBSのメッシュタイプでした。

1980年代当時のセダンとしては、圧倒的に角度が付いたネガティブキャンバーは、アルピナの大きな特徴のひとつでした。
これにリヤスポイラー(当時1983年まで、日本車ではこのようなエアロパーツ装着は禁止でした)。扁平率55%(これも60%扁平率すら1983年まで日本車は禁止でした。)に、赤い「B7」とturboの文字が備わるわけですから、この後姿の威圧感は相当なものでした。

アルピナマーク入りのBBSメッシュホイール。純正のアルピナホイールは、20本の放射状スポークが施された独特のデザインでしたが、このBBSメッシュも当時のマニアには垂涎の高級ホイールだったことに変わりはありません。

こちらがBMWのお家芸、「ストレート6」をベースにした、アルピナチューンの3.5リッター、ターボエンジン。
タービンには、KKK社のK27型と云うターボチャージャーがシングルで装着されていました。
ブースト圧は、当時としては高めの0.7barでしたが、これでもタービンの許容量からすると若干低めの設定だったようです。
1980年代当時の性能バロメータのひとつであった1/4マイル(ゼロヨン)の公式タイムは、14秒フラット、0.62マイル(ゼロセン)25.0秒フラットと、云う当時のセダンだけでなく、スポーツカーをも凌駕する俊足マシンでした。
最高速度は165マイルですから、265km/hと発表されていました。
このようなスポーツカーでも、この時代は、まだ5速トランスミッションが当たり前でした。
車体は、1,588kgと21世紀の自動車に比べるとかなり軽い車体だったことが、高い計測値に寄与していたと思われます。
また、駆動はFRで、ノンスリップデフが奢られていました。

さて、こちらがこの個体のオーナーが製作されたチューニングパーツ。
なんと!ステンレス製のエキゾーストシステムを自作しておられました。
しかも、このマフラーは、室内から排圧をコントロール出来ると云う画期的な装置が装備されています。
住宅街などを走るときには、末端のバッフルを閉めて音量を押さえ、ワインディングや高速などのドライブ時には、開放すると云う優れものです。
わたしも、嘗てFC3S型RX-7に乗っていた時には、スポーツマフラーの音量が夜の住宅街では気になりました。
あのときは、こういうことは全く思いつきませんでしたが、あったらこれ欲しかったなぁ。

ドアを開けると質実剛健のBMWのがっちりとした内装が現れます。
見た目同様、開閉音も重圧な「ボン!」と云う感じで、とってもがっちりしています。

座席は、ピンストライプがあしらわれたレカロが装着されていました。
確か、このストライプのシートは、アルピナ純正だったと記憶します。

ブレた写真ですいません。
BMWのコックピット型インストゥルメントパネルと、換装されたウッドステアリング。
当時、BMWのようにコントロール類が全部運転手の方に向けて角度が付いているクルマは珍しかったのでした。

ターボエンジンゆえに、回転計は6,000rpm+アルファからがレッドゾーンと低めに設定されています。
E28型BMWは、ノーマルのクルマを少し運転したことがありますが、ドアの開閉から、シートクッション、ステアリング、オルガン型のスロットルペダルに至るまで、どれもがとてもしっかりした感触で伝わってくるのが印象的でした。
21世紀のとても軽い操作類の自動車に慣れた人なら、各操作が非常に重く感じるかもしれません。
しかし、これこそがBMWに乗ってるぜ!思わせるものだったと記憶します。

木製のシフトノブにもアルピナのエンブレムが付いて居ました。
その左右に見えるのは、パワーウインドウのスイッチで、ほとんどの日本車は今でもそれぞれのドアにこのスイッチを付けるのが好きですが、わたしは中央のコンソールに配置するヨーロッパ車のレイアウトが機能的且つ合理的で好きです。

特に都会に住んでいる旧車のオーナーのひとつのハードルになるのが「エアコン」です。
当時は、12aタイプのフロンガスを使うエアコンが主流で、このガスは21世紀では入手困難+環境に悪いと云われていることがあります。
このアルピナB7ターボには、エアコンではなく「クーラー」が搭載されていました。
1970年代頃の日本の乗用車も、大抵はこの「クーラー」が着いていました。違いは、内気循環のみか外気循環出来るかなので、「クーラーをかけてタバコを吸うと目が痛くなる」と云う話が当時は定説でした。
しかし、一時80年代車のオーナーだったときに、このクーラーを探したのですが、国内では既に販売されておらず、諦めた記憶があるのですが、このB7ターボのオーナーさん曰くは、海外ではまだ新品で入手できるそうで、日本でもネットなどで手に入れられるのだそうです。

【こぼれ話】
この個体は、中兵庫クラシックカーフェスティバル2014の会場でオーナー様にお声を掛けさせて頂き、取材させていただきました。ありがとうございます。
わたしは、この時代のアルピナと言えば、町内のお医者さんが乗っていたのを思い出します。
確かB7ターボと3シリーズベースのC1あたりと、モーターサイクルのRかK100RSを持っておられました。
町内の回診で、このB7ターボが走る姿をよく目にしましたから、アルピナは自分の中では一番身近で見ることが出来るスーパーカーでした。
チューンド・ストレートシックスの独特のエキゾースト音と、リヤのネガティブキャンバーが今でも強く印象に残っています。
結構飛ばすお医者さんでしたが、コーナリングで殆どロールしていないのも、当時の印象としては強烈でした。
ご本人も気に入っておられたのでしょう。そのアルピナB7ターボは随分長い間、そのガレージにあったと思います。
今回の個体では、オーナーさん自作のエキゾーストがとても印象的でした。
大人になってある程度自分で自動車を触れるようになってから、少し頭で考えたりしたことはありましたが、ほんとうにこのように創ってしまう姿勢には、頭が下がります。
また、アルピナオーナーらしく、ランチにはお洒落な欧米の道具で手造りのサンドイッチを作っておられ、おすそ分けを頂きましたが、見た目も味もとても美味しかったです。ありがとうございました。
こうして、好きなヨーロッパのクルマと共にライフスタイルを持っておられるオーナーさん、とてもかっこいいと思いました。



