アルヴィス・12/50(ALVIS 12/50 – 英国車 -1925年)

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Alvis 12/50 (英国車 - 1925年)_01アルヴィス・12/50
(ALVIS 12/50 – 英国車 -1925年)
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大変貴重なクラシックカーをご紹介します。1925年(大正14年)の英国車「アルヴィス(ALVIS) 12/50」です。
映画「チキチキバンバン」に出てきそうな、いかにもクラシックカーらしいサイクルフェンダーが標準の時代のクルマです。
今や恐らく世界に数えるほどしか存在しないと思われる、博物館から飛び出してきたような一台です。


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アルヴィス12/50(ALVIS12/50)は、英国の工業都市、コヴェントリと云うところで1919年に創業した「Alvis Car and Engineering Company Ltd」が製作した量産型自動車です。このアルヴィスと云うメーカーは、1967年まで存在していたそうですが、その後国営企業のローバーに吸収されたと云う記録があります。
隣に停まっているクルマがオースチン・ミニと云うこともありますが、典型的なオールドクラシックカースタイル時代の自動車、アルヴィスは、今の目で見るとかなり大柄な車体を持っていました。
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真鍮製?と思われる角の取れた形状のフロントグリルに大きなヘッドライト、薄いサイクルフェンダーの下にはポジティブキャンバーの強い大きなタイヤと云う1920年代の自動車の典型的なスタイリングです。
フロントグリルの上には、立体的なウサギのオーナメントが立派に立っていました。
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アルヴィス12/50は、後姿がとてもユニークでした。
フィッシュテール型の絞り込まれたテールエンドは、当時のスポーティーカーと云う位置付けだったのでしょうか。
その下に斜めに収まるスペアタイヤがとても個性的です。
しっかりとしたラダーフレームの上に架装されたボディは、バルクヘッド部分からテールエンドまでが一体化した、モノコックボディのような形状をしています。ちゃんと屋根もあって、折りたたまれてベルトで留まっています。
前から後ろまでの一体化したサイクルフェンダーがとても個性的ですが、これとスクリーンと屋根をを外せば、即当時のレーシングカースタイルに変身できそうでした。
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こちらは、アルヴィス12/50のヘッドライト。恐らく電球ではなく、カーバイト式だと思われます。レンズカットは無く、21世紀のまぶしいライト、「マルチリフレクター」のようになっていますが、恐らく光量はそれほど無いと思われます。
なんと云っても、このライトの製造メーカーに注目。1970年代日本でも、市松模様とネコのマークで一世風靡した「マーシャル(MARCHAL)」製です。マーシャル社は1923年創業だそうなので、かなり初期の製品と云うことになります。
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こちらは、リヤのサスペンションと駆動部分です。
ラダーフレームに、リーフリジット(板ばね)式サスペンション、デファレンシャルケース、そしてとても大きなドラムブレーキと調整部分などが見えますが、100年ぐらい前の自動車でも、21世紀の商用車と比べると、このあたりの基本構造は、ほとんど変わっていないことが判ります。
デファレンシャルケースには、オイルメンテナンス用の口が着いています。当時の自動車と21世紀の自動車の違いは、当時の自動車はシンプルなので、メンテナンス性が良さそうなことです。但し、今よりメンテナンスの回数は多そうです。
それでも、今の自動車は100年後に走れるのだろうか?と思うことしばしです。
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こちらは、海の乗り物にでも着いていそうな形ですが、テールランプです。配線が改めて引いてあるので電球式のようですが、当時はカーバイトだった可能性があります。
このランプのデザイン、今でもカスタムカーあたりに使えそうな感じがするのですが。
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アルミや真鍮の削り出しのように見えたので、果たして当時のオリジナルなのだろうか?とちょっと調べてみましたが、どうやら当時の設計のままのようです。
画期的だったであろう、現代車と同じく、5本のボルトで止まっているアルヴィスのホイール。
この個体は、ブレーキが橙色に塗ってありましたが、これも21世紀でも赤く塗ったブレーキシステムがスポーツモデルにありますから、流行のカーファッションも100年前のリバイバル!?と云うことになります。
ちなみに、サイズは「4.40/4.50-21」とありましたので、21インチホイールのようです。
そう云えば、21世紀でもカスタムで「21インチホイール」とか大きなホイールが流行っていますね。
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こちらは、エンジンフードの隙間から覗き込んだエンジンルームです。
排気量は、年代からして1,598ccではないかと思われます。なんと!テンロク。
外に飛び出した白いパイプはエキゾーストです。
キャブレターが見えますが、これも最近まで主流だったキャブレター式エンジンのものと見た目も殆ど変わっていません。
メーカーも消滅していますし、100年ぐらい前のクルマですから、さすがに純正部品の調達は難しいでしょうけど、とにかくシンプルな構造なので、そうそう壊れないでしょうし、いざとなれば流用などで何とかなりそうにも見えました。
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運転席の眺めです。
手前の木は屋根のフレームですが、木目の材質が家具の素材に似ていました。
よく観たら、ドアに窓はありません。外にドアの取っ手も着いていませんでした。まだ世界の街が平和だった頃。
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木目のインストゥルメントパネルは、木製の板をくりぬいた形状ですが、注目はバルクヘッド部分からドア部分に一体感を保ちつつ周り込み、ちゃんとフチの曲線にあわせてウッドが貼ってある点です。ひとつひとつ時間をかけてこしらえた、手造りの職人芸だったと思われます。
計器類がこれまた船舶用のような渋い創りでした。
左端は時計のようです。100年も経っているので当たり前ですが、ひとつひとつがアンティークの機械でとてもかっこいいデザインでした。
ウッドの下のアルミ板に着いているメーターは現代の社外品のようです。
助手席の足元のシンプルなこと!
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奥に見えるのはスピードメーターのようですが、英国車なのでマイル表示でしょうか。
これもテプラにとって代わられつつあるテープ「ダイモ(DYMO)」で数字が貼ってあるのがキロ表示と思われます。
手前は、ステアリングに装着されたコントロール類スイッチ。100年前からステアリングにスイッチは着いていたんですね。
右はイグニッションのようですが、スイッチはTHRがスロットル?、キャブレターか何かの調整かな?と思いましたが不明でした。
とりあえず、1920年代の自動車はエンジンを掛けるときと、温まったときには、若干の調整をしないといけない儀式があったと思いますので、そのようなことをする装置なのでしょう。
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これは21世紀のカスタムカーでも、あまりやってるのを見たことがありません。ステアリングラックが「鏡面仕上げ」。
3ペダル式ですが、この時代の3ペダルは、確か右からアクセル・ブレーキ・クラッチでは無かったと記憶します。
右からC・B・A・だったかな?
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左側の姿。
なんと云ってもエキゾーストパイプがかっこいい!
だがしかし!まてよ。ここにエキゾーストが通ってると云うことは、この自動車は2ドアではなく、1ドア(右側だけ)なのでした。
この角度から見ると、かなりのロードクリアランスが確保されていることが判ります。
当時は、アスファルト舗装なんて少なかったのでしょうね。
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【こぼれ話】
この個体は、「チームヤマモト・クラシックカーフェスティバル2012」の会場で、オーナー様にお声を掛けさせて頂き、取材させていただきました。ありがとうございます。
古いクルマの集まりであったこの会場でも、さすがに100年ぐらい前の大柄なアルヴィスの注目度は抜群でした。
この個体のオーナーさんは、様々な名だたるクラシックカーをお持ちなのですが、このアルヴィスも相当な期間を掛けて、レストアされたようです。いやぁ、なんとも凄い世界にいらっしゃいます。
わたしは子供の頃から、いろんなところでいろいろなオーナーさんに、相当数の自動車を見せていただいてまいりました。
種類もレーシングカーからスーパーカーからトラック、ボンネットバスまで様々でしたが、100年ぐらい前の自動車をこうしてあちこちじっくり見せていただいたのは、これが初めてとなりました。なんと!運転席にも座らせていただきました。ありがとうございます。
そうして、思ったのは
「100年経てども自動車の基本に変化なし!」
コンピュータや携帯端末の世界は、「5年ポンコツ」と云われるぐらい、凄まじく進歩しているように思えますが、自動車に関しては、じつは産業革命以来、基本構造はそれほど変わっていないことが改めて解りました。
1つの丸ハンドルと、3つのペダルが着いていて、1つのペダルでエンジンの回転を調整し、歯車をレバーで変えながらスピードを出して行き、ホイール部分に着いたブレーキをペダルで操作して停まる。
暗くなったら灯りをともすし、排気ガスは後ろに出る。タイヤは普通は4つ。
そして、その形状も、カーバイトが電球になったり、歯車の切り替えが勝手に変わるようになったけど歯車は歯車のままだし、ハンドルも小さくても軽くなったりはしましたが、丸いものを回転させて、歯車を介して前のタイヤの角度を変えるものだし、やっぱり自動車の構造はそんなに大きく変わってないんだなぁと思いました。
流行だって、カスタムだって、100年前からあるものがいろいろ見つけられたし。
と、思っていたら、前にも書いたことのある東大阪の町工場の会長さんの名言どおりだと改めて思いました。
「新しいもののヒントは、じつは忘れ去られた古いものの中にある。」
それにしても、この時代の自動車の周りには、ゆったりとした時間が流れているように感じました。
周囲に居る誰もがそういう気分になれるし、子供は絵本から出てきたような姿に大喜び!
この自動車のひぃおじいちゃんは、電気仕掛けのスピード自動車の時代を、今もゆったりと見守り続けているようでした。

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