フォード・アングリア・エステート(Ford Anglia Estate – 英国車 – 105E型 – 1963年)

輸入車-フォード

フォード・アングリア・エステート(Ford Anglia Estate - 105E型 - 1963年)_01
フォード・アングリア・エステート・デラックス
(Ford Anglia Estate Deluxe – 英国車 – 105E型 – 1963年)
フォード・アングリア・エステート(Ford Anglia Estate - 105E型 - 1963年)_02
味のある英国フォードの一台をご紹介します。
21世紀に入って、とある映画シリーズで脚光を浴び、一躍有名になった車種でもあります。
フォード・アングリア。ここにご紹介する個体は、アングリアの中でも日本では大変希少な、エステートワゴンモデルです。


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フォード・アングリア(105E型)は、20世紀初頭から存在する英国フォード社が、1959年に送り出しました。
ヨーロッパ車らしいボディラインに、アメリカ車風のクロムめっきやエッジを持つとてもユニークな小型車でした。
エンジンは、1,000cc(997cc)の直列4気筒OHVが搭載され、ボディ形状は、2ドアセダン、エステートワゴン(3ドアのみ)、パネルバン(2ドアのみ)と云う構成でした。
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当時の日本車も影響を受けたのではないかと思われる、アングリア・エステートの後姿。
当時のエステートワゴンのデザインは、機能を考えるとある程度似通うのかもしれませんが、この姿を見た瞬間に、いくつかの日本車が思い浮かんだのでした。
使い勝手を考えたバンパー高から開くテールゲートは、平面ではなく、真ん中でくの字に折れ目がついており、全体のボディワークに合わせたユニークな形状となっています。
ゲートの右下に見えるめっきの丸いパーツは、ガソリンタンクの蓋です。英国車らしく後ろに着いているのが特徴です。
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とても立体的な造形のフォード・アングリア・エステートの顔つき。
筆者は、某映画シリーズが流行るずっと以前、子供の頃からアングリアの名を知っていましたが、当時、このフロントグリルの形状から成るユニークな顔つきのデザインと相まって、「あんぐりと口を開けたような顔だからアングリア」と覚えたのでした。
こうして部分的に観ると、曲線とめっきの使い方が実に絶妙です。
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アングリアのヘッドライトの上には、まぶたのようなモールが備わり、あんぐりと口を開けたようなフロントグリルと丸いライトとで、とてもユニークな表情を魅せます。
一般に、クルマの前端部分を「顔つき」とよく云いますが、アングリは、まさに「顔」です。
21世紀の目尻の吊り上ったクルマを見慣れてくると、尚更とても穏やかな表情に見えます。
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アングリア・エステートのフェンダーミラーですが、一見何の変哲も無い様に見えて、じつはこのように肉厚がとても薄く、中々の造形をしているのでした。
ちょっとした高級な食器か眼鏡を連想させました。
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こちらも銀食器のような美しいホイールカバー。
ホイールカバーにしておくにはもったいないぐらいの繊細なデザインです。
ちなみに中央部分のめっきに映り込むのは、イタリアの名車、ディーノ246GTです。
タイヤは、165/80R13と云う、21世紀では軽自動車並みの細いサイズが組み合わされます。
細いタイヤは路面の抵抗が少ない分燃費が良く、80と云う扁平率は、乗り心地を良くします。
アングリアの時代のクルマを観ていると、燃費燃費とうるさい21世紀の乗用車が、なぜ高扁平率で幅広タイヤなのか?少し疑問に思います。
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エンジンは、フォードのいわゆる「kent」と呼ばれるエンジンシリーズのひとつで、先述の通り、997ccの水冷式直列4気筒OHVで、出力は39BHP/5,000rpmと云われています。
ケントエンジンと云えば、スーパーセブンなどの英国製小型スポーツカーやフォーミュラカーにも多数使われていた、当時の定番エンジンでした。
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アングリアのケントエンジンは、プレクロスフローと呼ばれるタイプですが、よく観るとキャブレター、インテークの直下にエキゾーストマニーホールドが着いていると云う吸排気のレイアウトで、吸気をこんなに熱して大丈夫なのだろうか?と、素人が少し余計な心配をしてしまいましたが、そこは名機と云われるケントエンジンですから問題無かったのでしょう。
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こちらは、エンジンルーム内に貼り付けられていた、プレートです。
だいぶ読みづらくなっていて解読できませんでしたが、「Dagenham Motors」(ダジェナム・モータース)と書いてあることと、BN105と刻印されているのがかろうじて判ります。
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アングリア・エステートの室内ですが、これがまたユニークでした。
左ハンドル仕様を想定していたのかもしれませんが、左右対称のインストゥルメントパネルは、米国車風の色使いとめっきが施されていて、とても魅力的な空間を演出していました。速度計は、当時のトランジスタラジオのようです。
さらに、とても細いステアリングやレバー類がこれに華を添えていました。
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シート地や形状からも、米国車を意識したデザインであることが判ります。
フカフカのベンチソファーのような後席は、以外と広びろとしているように見えました。
真ん中のベルトを引くと畳めるようになっているようです。
アングリア・エステーとは、なぜ3ドアのみの設定だったのかが不思議な気もしますが、かつては日本のカローラやサニーのバンにも3ドアモデルが在りました。
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こちらは、貴重なステッカーが残っておりました。
恐らく、このアングリア・エステーとが英国の地を走っていた頃からのものでしょう。
「AA」と云うのは、日本で云う「JAF」や「JRS」のようなロードサービスの法人のことで、現在でも黄色にAAの文字で、レッカー車が走っているようです。
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こちらのステッカーは、このアングリア・エステートのオーナー様のお店である、「Coventry Garage」のもの。
ロータス、ジネッタ、トライアンフ、MGと云った英国製ヴィンテージカーの販売からメンテナンス、修理、チューンを行っているお店です。ご興味のある方は、下記のリンクをたどってみて下さい。
コベントリーガレージ」(http://www.coventrygarage.com/)
兵庫県篠山市川北831−1 (定休日/月曜日)
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【こぼれ話】
この個体は、チームヤマモト・クラシックカーフェスティバル2015にご参加のオーナー様に、取材させていただきました。ありがとうございます。
フォード・アングリアは、チームヤマモトの拠点、ヤマモト自動車(綾部市)さんが、セダン型を所有されていますので、それを少し見せていただいたことがありましたが、エステートは初めて見ることが出来ました。
アングリアといえば、21世紀の人々は、まずあの映画シリーズを思い浮かべることでしょう。
わたしはその映画を観た事がありませんが、アングリアは昔から魅力的な乗用車のひとつとして記憶にあります。
なんといっても特徴的な顔つきの印象が強いのですが、今回細部を見せて頂いて、クルマ全体に一貫したコンセプトととても丁寧にデザインされいてるクルマであることが改めて解りました。
そして、米国車を意識したディテールだったことも、ボディ全体が、どことなくヨーロッパ車(と、いっても今思えば米国車を意識したヨーロッパ車と云うことになるのですが)の雰囲気が強かったので、新たな発見でした。
今や日本での現存数は大変少ないと思いますが、とても魅力的な一台でした。
そして、やっぱりわたしの中では、この顔つきは「くちをアングリや」なのでした。

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