(Meguro K1 “STAMINA”- K型 – 1962年式)


1960年代初頭まで、日本を代表するバイクメーカーの一つに「目黒製作所」と云うメーカーがありました。
モータースポーツ黎明期には、レースの世界でも活躍し、スポーツバイクの一時代を創りあげたメグロ。
1963年に、川崎航空機工業(現・川崎重工業)傘下となる直前の1962年型のメグロK・スタミナ(K1)をご紹介します。
特にエンジンは、有名な「カワサキW1」のルーツでもあります。

オートバイが「鉄馬」と呼ばれていた時代そのままの、60年代バイクの王道を往く重圧なスタイルのK1。
エンジンは、空冷式並列2気筒500ccでした。
このK型製造中の時期に、メグロは川崎航空機の傘下に入りましたので、カワサキW1には、このオートバイの血統が生きていると云われています。

エキゾーストパイプやハンドルの曲線がとても美しい後からのフォルム。
見れば見るほど、わたしが乗っているホンダ・CD125Tベンリィが、このあたりのバイクの影響を受けているのがよく判りました。
この時代のスポーツバイクのスタイルは、その後も人気が衰えることなく、21世紀のカスタムバイクのお手本にもなっているように思います。
キャプトンマフラー、小さな異形のテールランプなどです。

美しい燃料タンクの造形。エンブレムは、高度成長期に世界を目指す姿勢が伺える羽ばたくマークです。
ニーグリップ用のパットは、21世紀でもシングルバイクを中心に採用されており、とても実用的な装備です。

その後、カワサキWシリーズのアイデンティティとなった、独特の形状のクランクケースが特徴のメグロK型のエンジン。
空冷式並列2気筒OHV、497ccで、33馬力を6,000回転で発揮しました。
最高出力回転数が控えめなのは、このエンジンのロングストローク設計(内径:66mm×工程:72.6mm)が、影響しているものと思われます。

直立したエンジンの手前に見えるシフトペダルは、その後のバイクの標準と左右逆の位置に着いていました。これは、手本となった英国車がそうだったからだそうです。
そして、カブなどでおなじみのロータリー式になっていますが、この方式自体、目黒製作所が最初だったそうです。ちなみに前進4段だそうです。

こちらは、手造り感漂うエンジンのヘッドカバーです。
恐らく鋳物を、手作業で削って仕上げたのではないかと思います。現代車には無い、いい味出しています。

ものすごく単純な構造に見えるミクニ製のキャブレターは、シングル式で、これも特徴的な、シリンダーヘッドと一体になっているインテークマニーフォールドによって、左右のシリンダーに混合気が送られる仕組みになっていました。
それにしても、非の打ち所が無いコンクールコンディションでした。

美しい曲線を描くステアリングまわり。
この眺めだけで、メグロに乗っている感動が味わえる運転席です。
ステアリング中央のダイヤルは、ステアリングダンパーの調整ネジです。
近代の油圧ダンパー式ではなく、金属プレートの張力を調整するタイプです。
速度計は、ヘッドライトと一体式で、回転計はありません。右のチョークレバーの造形が、また朱玉の逸品。


こちらは、左側のコンビネーションスイッチ。ヘッドライトとホーンと・・・なんでしょうか。
ここに見えているだけでスイッチ類の電気配線が完結しているのは、長持ちする一つの秘訣でしょう。
さて、2段落上の写真で、燃料タンクにキャップと別にもう一つ穴がありました。
オーナーさんに、フタを取って見せていただくと、
タンクを固定しているボルトだそうです。恐らくこの一本で留まっているようでした。
上から貫通していると云う中々斬新なレイアウトになっていますが、すぐにタンクを外せるので、タペット調整などのメンテナンスは容易だったと思います。

このメグロの型式を確認するために、ステアリングヘッド部にある車体番号を見たところ、型式は書いていなくて、恐らく年式であろう「62-」で車体番号の刻印がありました。それとも-62-の前に「K」と入っていたのかもしれません。

【こぼれ話】
この個体は、中兵庫クラシックカーフェスティバル2011の会場で、オーナー様にお声を掛けさせて頂き、取材させていただきました。ありがとうございます。
うちの義父も嘗て250cc版に乗っていたと云うメグロ。
現カワサキであることや、名前は知っていましたが、本物をじっくりと見せていただいたのは、これが初めてでした。
以外にも、わたしのCD125Tベンリィ号(1992年式)と、あちこちがそっくりだったのが印象的でした。
そしてロータリー式ミッションが、国内でメグロが最初だったと云う事も意外でした。
手仕上げ漂う各パーツの造形は、芸術品のようで、当時の日本の職人が優れた腕の持ち主だったことがよく判りました。
大型バイクと云えば、力強い、頑丈と云うイメージだった頃の、オートバイ。
こういう時代に生まれてみたかったなぁと、あれこれイメージが膨らむ、伝説の名車との対面でした。
