新明和興業 宝塚製作所 ポインタージュニア JE(JE型 – 1954年)

日本車 その他

新明和興業ポインタージュニアJE_01
新明和興業 宝塚製作所 ポインタージュニア JE(JE型 – 1954年)
新明和興業ポインタージュニアJE_02
大変貴重な文化財的モーターサイクルをご紹介します。
第二次大戦中に、「紫電」などの軍用航空機を製作していた「川西航空機」は、戦後にモーターサイクルメーカーとして再スタートしました。
「新明和興業」と云う名前に改称し、「ポインター」と云うモーターサイクルを製造するようになります。ポインター号は、浅間火山レースにもエントリーしていました。
ここにご紹介します、「ポインタージュニアJE型」は、旧川西航空機宝塚製作所で製作されたそうです。


新明和興業ポインタージュニアJE_03
ポインタージュニアJEは、自転車から派生したばかりの時代、1954年製のモーターサイクルで、自転車の雰囲気もかなり残っています。
ただ、BSモーター41型と比較すると、エンジン搭載位置などが随分とオートバイらしくなっています。
フェンダーに取り付けられたバンパーや、メインフレームにエンジンガードが装備されているあたりもバイクらしいです。
新明和興業ポインタージュニアJE_04
横から観ると、タンクやエンジン搭載位置はバイクなのに、ペダルは自転車のままです。
このペダルは、ステップと同時に始動時のキックにもなるようです。人力と内燃機関のハイブリッドと云ったところでしょうか。
メインフレームは、昭和の氷屋さんか、クリーニング屋さんが使っていた自転車を思わせる、自転車としてはとても頑丈そうなものです。
メインスタンドやサドル型のシートにも、自転車の面影が残ります。
新明和興業ポインタージュニアJE_05
運転席の眺めですが、油脂タンク類以外には、ほぼオートバイの面影がありません。
ホーンは、手前の黒いゴムを押すと「パフッ」とラッパが鳴る仕掛けですし、計器はありません。
2つの白いつまみは左右の方向指示器のレバーと思われますが、よくぞこの時代まで樹脂の形が残っていたものです。
奥の赤い油脂タンクは、本来のガソリンタンクが不調のため、臨時で取り付けられたガソリンタンクでした。
この時代は、まだオイルとガソリンを混ぜて使う「混合給油式」です。
新明和興業ポインタージュニアJE_06
こちらは、懐かしい「アポロウインカー」と呼ばれる方向指示器です。
とても古い時代のVWビートルなどで見ることが出来ますが、モーターサイクルにも付いているとは知りませんでした。
新明和興業ポインタージュニアJE_07
こちらは、本来のガソリンタンクです。
ハーレーダビッドソンのチョッパータンクのような綺麗な造形をしています。
「TAKARAZUKA MOTOR WORKS」と描かれているのが、旧川西航空機宝塚製作所製の証だと思われます。
新明和興業ポインタージュニアJE_08
両側面に取り付けられた小さな革のカバンは、今で云うサイドボックスでしょう。
上部に「ロポア」と云う文字が入っていますが、昭和初期のひらがなを右から読む読み方で「アポロ」と云う意味でしょう。
側面の昆虫の画は、なんと云う虫でしたか、デザインが戦時中を思わせます。ポインターの標準品かどうかは不明でした。
新明和興業ポインタージュニアJE_09
ステアリングヘッド部分に、元になった自転車のフレームメーカーと思われるエンブレムが着いていました。
「KING ROYAL CYCLE」と描いてあるのですが、国産か外車かは不明ですが、BSモーターと同じように、新明和は自転車フレームにモーターサイクルの装備を製作して袈装する手法でバイクを造っていたと推測します。
新明和興業ポインタージュニアJE_10
さて、エンジンは50ccの2サイクル単気筒で混合式給油です。
一見、単純な構造に見えますが、じつはよく観ると非常に凝った造りになっています。
サイドから短いながらもエキスパンションチャンバー型のエキゾーストが出ていますが、右側面にリヤブレーキのペダルがあり、そのリンクが下を通っています。
新明和興業ポインタージュニアJE_12
さらに、エンジンの動力はこのとても大きなドライブプーリーを介してベルト駆動で後輪に伝えられます。
1950年代で既にベルト駆動と云うのに驚きますが、工場の工作機械の応用と考えれば納得も行きます。
ドリブンとドライブのプーリーの大きさの違い(ファイナルギア)がとても興味深いです。
新明和興業ポインタージュニアJE_11
替わって右側面から見てみると、ワイヤー式のクラッチらしきものがシリンダーブロックの後ろに見えます。
電装のポインターがありそうな場所に、バイクの名称である「POINTER」と書いてあるのが洒落ていましたが、これ実際にどちらの意味で書いてあったのでしょう。
クラッチ/ドリブンプーリーが入っていると思われるケースの後ろ端にエンジンマウントがありますが、どうやらここでベルトの張りを調整できるようになっているようでした。
駆動ベルトの張りで、エンジン本体の角度が微妙に変わるのも、モーターサイクルが精密機械となった今となっては面白い機構です。その後の「モーターサイクルのシリンダーの角度は、前傾何度が最適か?」みたいな議論が繰り広げられるずっと以前の乗り物のようです。
新明和興業ポインタージュニアJE_13
そして、さらに面白いのが、右側には人力ペダル用の駆動伝達装置がありました。
内燃機関の出力がゴムベルトで伝達され、人力の伝達方法にスチールチェーンと云うのも、考えてみたら面白い組み合わせです。
両方あると云うことは、やっぱり人力と内燃機関のハイブリッドのようです。
新明和興業ポインタージュニアJE_14
ポインタージュニアJE型の運輸省認定プレートが綺麗に残っていました。
エンジン番号が、3055番ですが、これが55台目なのか、3055代目なのか気になりました。
新明和興業ポインタージュニアJE_15
【こぼれ話】
この個体は、「古い二輪車を愛でる会 2014」の会場で、オーナー様に取材させていただきました。ありがとうございます。
兵庫県の北阪神地域に住んでいる筆者としては、「タカラヅカ モーターワークス」の文字にとても惹かれました。
嘗てこの地には(現在の阪神競馬場あたりにあったようです)、川西航空機と云う、戦闘機を作っていた飛行機工場があったと知りました。
戦後に、戦勝国から航空機の製造を禁止された同工場は、「新明和興業」と名を変えて、モーターサイクルエンジンの生産を開始したそうです。
現在でも、「新明和工業」と云う名前の会社になっているそうです。
もう、このメーカーの名前すら、人々の記憶から消えようとしているのかもしれませんが、会社の成り立ちに歴史を感じますし、ポインター号そのものも、自転車から派生したモーターサイクルの来し方を知ることができるという、これぞ「走る歴史」と云える一台でした。
そして、豆腐屋のようなクラクションで済んだのどかな時代が、少し羨ましくもありました。

タイトルとURLをコピーしました